挑戦する企業文化を醸成する -革新する組織創り-
その1
~ 従業員は動かない ~
和菓子の製造販売E社のF社長との出会いは、弊社の「潰さない会社を創る~会社の軸経営への脱皮~」のセミナーに参加されたことが始まりでした。我々が主張する、「“潰さない会社を創る”ためには、“マネジメント経営”だけでは不十分であり、“マネジメント経営”に“挑戦する企業文化”を融合した、経営理念を軸とする“会社の軸経営”に脱皮する必要がある」との言葉に刺激を受けて、弊社に相談に来られたのです。
F社長からお聞きした、和菓子製造販売E社の概要は下記の通りでした。
〇創業から120年の老舗和菓子メーカー F社長は6代目。3年前に父親から事業を承継した。
〇創業時は自宅で和菓子を製造販売していた。高度成長期~バブル期まで、製造卸をおこなってきた。
〇バブルがはじけてから、あらためて店舗販売もおこなうようになった。
〇現在、製造工場と郊外型の直営店10店舗、一部、卸売販売もおこなっている。
〇競争が激しくなり、主力商品の売れ行きが落ちている。
〇今までは、代々社長が商品開発をおこなってきた。しかし、これからは、社長一人で商品開発できる時代ではない。
〇今後は、直営店やWEB販売、催事販売を伸ばしたい(卸売販売は縮小させていく)。
〇社員やパート・アルバイト(以下従業員)を巻き込んで、新たな製品開発やキメの細かい接客をすることが必要となっている
- (F社長)
- 先日のセミナーに参加させていただいて、「“潰さない会社創り”のためには、“マネジメント経営”に加えて、“挑戦する企業文化”を醸成しなければならない」「経営理念を軸とする“会社の軸経営”に脱皮することが重要である」との言葉を聴いて、目から鱗が落ちたような刺激を受けました。
- (コンサルA)
- 御社のお話を伺っていると、大きな壁にブチ当たられているように感じました。
- (F社長)
-
そうなんです。弊社では、代々社長が、商品開発をおこなってきました。商品開発には、リスクをともないます。商品開発は、リスクの取れる人(社長)がやるべきだという不文律があったからです。しかし、今はそのような時代ではありません。
私が修業をしてきた菓子メーカーでは、チームで商品開発をおこなっています。私も、商品開発のメンバーでした。私は、従業員全員で商品開発や販売戦略を考えられる組織にしたいのです。 - (コンサルB)
- 何か、今までに、具体的な対応はしてこられたのでしょうか。
- (F社長)
- 1年前に、一人ひとりに、商品開発の主体者になってもらいという想いから、「月に一度、商品提案週間を実施する」と宣言しました。その仕組みは、従業員に対して、どのような商品提案でも良いので、名前と提案内容を書いて、提案箱に入れてもらいます。提案書は、従業員のモチベーションアップのために、提案1点に対して、少額ですが、会社が買い取ります。さらに、商品化した場合は、商品化表彰、実際に、売れた場合は、1年間に限り、提案者にキャッシュバックするとしています。その後、店舗間や部門間で、競い合うような仕組みも導入して、提案の多い店舗や部門を表彰するようにしました。
- (コンサルB)
- 成果はいかがですか。
- (F社長)
-
残念ながら、最初の月こそ、100件を超える提案がありましたが、徐々に、提案件数が減ってきて、今は、数件しかありません。また、提案を商品化できるように、商品開発委員会を創りましたが、面白そうな提案を委員会に諮っても、実際の商品化については、「社長にお任せします。我々にはわかりません」といった意見が出る始末です。
また、従業員に対して、「なぜ提案をしないのか」と聴くと、「提案するネタがなくなりました」「商品になるようなアイデアが出てきません」「自分の提案が商品になるイメージができません」といった声が返ってくるのです。 - (コンサルB)
- 他に取組まれていることはありますか。
- (F社長)
-
少しでも「POSレジやスマレジのデータを理解できるようになってほしい」「データの内容を読み取って、店舗の売り上げアップつながるヒントにしてほしい」という想いから、POSデータの勉強会もしました。残念ながら、今まで、店舗は売上第一主義・結果主義できたことから、この勉強会に参加はするものの、売上高の構造といったことに、全く興味を示しませんでした。
このような八方ふさがりの状態の中で、金融機関に相談したところ、先生のセミナーを紹介してもらったのです。“潰さない”という言葉に惹かれて、すぐ申し込みました。 - (コンサルA)
- ありがとうございます。セミナーを機に、このような出会いの場を持てたことに感謝します。
- (コンサルB)
- 金融機関さんにも感謝しないといけませんね(笑)。
- (中略)
- (F社長)
- 弊社には「和菓子は真心(まごころ)」という考え方があります。しかし、先日のセミナーを聴いて、“真心(まごころ)”が、真心を込めて良い和菓子を創るといった、品質のレベルで止まっていることに気が付きました。経営という視点から、“真心(まごころ)”の意味を再定義しないといけません。その上で、“挑戦する企業文化”を醸成するには、どのような取組みが必要なのか、教えていただきたいと思いました。
- (コンサルB)
- 我々は、先生ではないので、教えることはできません。我々の使命は、F社長の想いを解釈して、一緒に、良い会社創りをしていくことです。そのために、F社長や経営幹部の皆様に対して、革新に向けた気づきを醸成する役割を果たします。
- (コンサルA)
- F社長の今までのお話をお伺いすると、本当に一人で苦労をされてきましたね。今、おいくつですか。
- (F社長)
- 今年で、45歳になります。
- (コンサルA)
- ということは、経営幹部の方や職人の方は、ほとんどが年上でしょうか。
- (F社長)
- そうです。年は上ですが、会社を変えていくことに賛同してもらわなければなりません。年上の経営幹部や熟練の職人たちに対して、接していく中で、苦労というよりも、がむしゃらにやってきて、それでも、従業員は動かない、先が見えなくなったという感じです。その中でも、店舗従業員が若いというのが救いです。
- (コンサルA)
- 一つご提案ですが、今度、我々二人で、御社に伺ってもよろしいですか。経営幹部の方にお話を聴いてみたいです。また、ぜひ、工場と店舗をご案内していただけませんか。
- (F社長)
- それは、是非、お願いします。
- (コンサルA)
- 経営幹部の方のお話を伺い、工場と店舗を見ることで、我々も、御社の状況をより深く理解できるでしょう。御社にとって、必要な支援のイメージが湧き、具体的な提案もできると思います。一緒に、“真心(まごころ)”の意味の再定義を含めて、新しい企業文化、挑戦する企業文化を醸成していきましょう。
このようにして、和菓子の製造販売のE社を訪問することになりました。訪問時の認識と支援の内容について、次回ご報告いたします。

