コンサルティング物語

コンサルティング物語
「価値観の醸成」

EME「コンサルティング物語」は、コンサルティングの現場を物語風にアレンジしたものです。
コンサルタントの役割を身近に感じて頂けるように、EMEの新しいチャレンジです。

経営者の覚悟 -オレが責任を取る-

その1

~業績の逓減に歯止めがかからない~

今回のコンサルティング物語は、コロナ禍において経営者が革新に取り組んでいるイタリアンレストランD社の事例を取り上げます。

三大都市圏のベッドタウンE市に本社をおくD社は、70年続く老舗イタリアンレストランです。 創業は、現在の社長F氏の祖父のG氏(故人)が、戦後、GHQ相手に、洋食店を開店したことに始まります。D社は、日本人の生活スタイルの洋風化、さらに昭和40年代の高度成長期の追い風に乗り、多店舗化を進め、最盛期には10店舗にまで店舗数を増やしたのでした。

一方、創業者G氏は、息子であるH氏(現社長F氏の父親)を、本場でイタリア料理の修行を積ませたのち、後継者としてD社を任せるつもりで、イタリアに留学させたのです。イタリアから帰国したH氏は、イタリアで「伝統の味、料理の品質を追究するシェフの姿勢」を学んだことから、「多店舗化は、いつか頭打ちになる。料理の質を高めることこそ重要である」と、多店舗化を志向する創業者と、経営方針について、意見の対立が見られるようになっていったのでした。

時代は、H氏が予測した通り、オイルショックを契機に市場は停滞し、D社も店舗の縮小を余儀なくされたのです。このような厳しい経営環境の中、G氏は自分の経営手腕に限界を感じ、後をH氏に託したのでした。H氏は、経営方針を料理の質の追究に転換するとともに、H氏が料理の質を担保できる店舗数(3店舗)に絞り込む決断をしたのです。この店舗の絞り込み=顧客の絞りこみ、さらに、高付加価値を提供できるメニューの絞り込みによって、業績は徐々に回復していき、この方針はバブルの環境においても変えることはありませんでした。

現社長のF氏も、イタリアで修業を積んだのですが、F氏は直接D社には入らず、日本のイタリアンレストランで修業を続けたのでした。そこで、F氏は、日本の食材を活かしたイタリア料理の可能性に気づいたといい、その後のメニュー開発の基礎となったといいます。そして日本のレストランでの修行を終えたF氏は10年前、D社に入社したのでした。リーマンショックの後遺症が残る厳しい経営環境でしたが、F氏の独創的なメニュー開発が評価を得て、D社は業績を伸ばしていったのです。そして、F氏が入社して、2年後、今までのD社にはない新しいメニューを提供する店舗として、4店舗目をオープンさせたのでした。しかし、新店舗の業績は、予測を下回る結果が続き、また新店舗をオープンしたころから、既存店舗の業績も前年を割るようになってきたのです。このような経営状態から、経営を立て直すべく、5年前に、H氏はF氏に社長を譲り、自らは会長として、シェフの育成に専念するようにしたのでした。

しかし、業績は回復せず、3年前、F社長が相談に来られたのです。

(F社長)
レストランDは、70年続くイタリアンレストランです。Dでは、先代の社長であるH会長の時代から、料理の品質にこだわり、固定客に支えられて成長してきました。そして、私は、H社長のこだわりに加え、もっと日本の食材をイタリア料理に活かしていきたいとメニュー開発に取り組んできました。私が、Dに入社したころは、リーマンショックの後遺症で厳しい経営環境でしたが、D社の信用とあらたなメニュー開発が評価されて、大きな落ち込みもなく経営を続けることができました。
ところが、5年前に、もっとお客様に喜んでいただきたいと、創造的なメニューを提供する新規店舗を出店したのですが、この店舗が予定通りの売上をあげることができず、また、既存の店舗の売上も下がってきたのです。2年前に、私が社長を引き継いだのですが、業績を回復することができていません。
(コンサルA)
F社長は、業績悪化の原因をどのようにとらえていますか
(F社長)
新規店舗の売上が予定を下回っています。また、新規店舗の出店以降、既存店での売上も下降傾向にあります。やはり、お客様の要望にお応えするメニューが開発できていないことが原因ではないのかと考えています。一方で、メニュー開発は、例年以上に力を入れているつもりなので、メニュー開発だけではない、別の原因があるのではないかと考えています。
(コンサルA)
それでは、レストランDについて、もう少し、具体的なお話を聴かせてください。まずは、御社の創業からの歴史を教えていただけますか。

(中略)

(コンサルA)
レストランDの現状について教えてください。お店は、お客様から選ばれて成り立っています。レストランDがお客様から、選ばれてきた理由をどのように考えていますか。
(F社長)
会長が築き上げた「お客様との信頼関係」とレストランDにしかない「国産の食材を中心に据えた独創的なメニュー」だと考えています。
(コンサルA)
新規店舗において、予算が達成できていないことや、既存店舗において、売上が下がってきたということは、我々が考えているお客様から選ばれている理由が、お客様の要望や期待と乖離してきているのでしょう。一方で、選ばれている理由を創造しているシェフや店長の要望や期待とF社長の対応にも乖離ができているとは考えられませんか。
(F社長)
それは・・・。
(コンサルA)
一度、レストランDを訪問して、あらためて、売上が停滞している原因を探っていきましょう。

このようなご縁から、レストランDを訪問することになりました。訪問内容については、次回、ご報告します。