コンサルティング物語

コンサルティング物語
「顧客価値の創造」

EME「コンサルティング物語」は、コンサルティングの現場を物語風にアレンジしたものです。
コンサルタントの役割を身近に感じて頂けるように、EMEの新しいチャレンジです。

顧客価値を磨く~ワクワク会議の展開~

その1

~ 我が社の魅力って何だろう ~

M社(以下M温泉)は、政令都市の商店街の中にある、公衆浴場です。昭和初期に創業したM温泉は、戦争・水害・雷・地震 等、幾多の環境変化を乗り越えて、今日の地盤を築いてきました。

公衆浴場の業界は、廃業が相次ぎ、典型的な構造不況業種です。その一方で、来店客の95%が内湯を持っているお客様であり、そのようなお客様が内湯では得られない「場」を求めて来店されるのです。そのような経営環境の中にあって、M温泉のN社長は、「現場で働く、現場でお客様と接する、一人ひとりの社員が主役にならなければ、M温泉の将来はない」と考え、“M温泉の魅力創りプロジェクト”を立ち上げたのでした。そして、プロジェクトのファシリテーターの役割をコンサルタントに依頼したのです。

プロジェクトメンバーは12名、N社長はプロジェクトメンバーに入らず、プロジェクトの場では、コストの問題やプロジェクトから社員への依頼事項の徹底など、意思決定や活動の支援をしてもらう役割に徹して頂きました。

(最初に、N社長から、プロジェクトの目的・参加者への期待・スケジュール等の説明)

(コンサル)
先日、M温泉に入りましたが、本当に開放感があって、気持ちが良いですね。このM温泉の魅力を、広く皆さんに伝えていきましょう。 “M温泉の魅力創りプロジェクト”は、そのためのプロジェクトです
M温泉の魅力を創るわけですから、ワクワクするようなプロジェクトにしたいですね。ワクワクするようなプロジェクトにするためには、お互いに、約束を守って会議を進めることが大切です。約束は4つあります、(1)相手の意見を批判したり、否定したりしない (2)できるだけ多くの意見や質問をする(意見や質問の質よりも量を重んじる) (3)評論家的な意見は言わない(自分の意見・質問を言う) ④会議で決めるときは、必ず自分の意思表示をする(合意に参画する)、この4つの約束を守りながら、プロジェクトを進めていきます。
特に、“(4)会議で決めるときは、必ず自分の意思表示をする(合意に参画する)”というのは、簡単そうでなかなか難しいものです。そこで、1つの道具を持ってきました。意思決定カードと言います。実際に意思決定する場面では、賛成・反対だけではありません。そこで、(1)納得 (2)75%納得 (3)50%納得 (4)25%納得 (5)納得できない (6)わからない の6つのカードを用意しました。意思決定の場面では、このカードを上げて頂きます。納得度が低い場合、どこに納得できないのか、引っかかっているのか、不安があるのか、さらに、議論を深めていきます。
(コンサル)
では、最初の質問です。M温泉の歴史を共有しましょう。
今、多くのお客様が来店されるのは、過去、先輩の方々や皆さんが努力した結果です。従って、もう一度、M温泉の歴史を振り返り、我々が取り組んできたことを共有しましょう。

(N社長から、M温泉の歴史の説明と意見交換)

(コンサル)
次の質問に移りましょう。今、多くのお客様が来店されていますが、「M温泉は、なぜお客様から選ばれているのでしょうか(競合の温泉に行かないのでしょうか)。あるいは、M温泉の魅力って何なのでしょうか」 まず、自分の意見を付箋にどんどん書き込んでいきましょう。会議の約束の2つめです、意見の質は問いません、意見の量が大切です。

‐ 中略 ‐

(コンサル)
では、二つのチームに分かれて、意見を集約していきましょう。一人の人が、自分の付箋に書いた意見を発表して、模造紙の上に貼り付けてください。周りのひとで、同じような意見を書いた付箋があれば、発表者の付箋の周りに貼り付けていきます。さらに、次の人が意見を発表して、模造紙の上に貼り付けます。あとは、同じことを繰り返します。
お互いに魅力と感じていることを共有することが目的ですから、特に、まとめる必要はありません。ただし、1つ目の約束を守ることを忘れないでください。他人の批判・否定はしないことが大切です。

‐ 中略 ‐

(コンサル)
どのような魅力がでてきましたか。Aチームから発表をお願いします。
(Aチーム)
いろいろでてきました。一番多かったのは、従業員の対応(従業員の笑顔、従業員の対応、従業員の会話・・・)、次が、温泉の質、長時間営業している、歴史がある、マナーがしっかりしている、子供だけできても安心・・・・
(コンサル)
Bチームはいかがでしたか。
(Bチーム)
一番多かったのは、Aチームと同じで、従業員に関することです、次に、地域に密着している、マナーがしっかりしている、温泉の質、健康に良い、長時間営業している、歴史がある・・・。
(コンサル)
「従業員の皆さんの対応」や「従業員の皆さんが関わっていること」が魅力だと言う意見が多かったわけですが、皆さんは、普段、どのようなことにこだわっていらっしゃるのですか。

‐ 中略 ‐

(コンサル)
やっぱり、お客様に愛されているのですね。次回からは、このM温泉の魅力をパワーアップして、地域の人たちに広めていくために、何をすれば良いのか、議論を進めていきましょう。これだけ魅力があるとワクワクしてきますね。

こうして、M温泉の魅力が抽出されていきました。次回からは、このM温泉の魅力をさらにパワーアップして、地域に広めていくために何をするべきか、プロジェクトチームの議論が展開されていく様子をご報告します。

その2

~ ワクワクする会社ってどんな会社 ~

社会・顧客・社員が魅力的に感じる会社で働きたいと思いませんか。EMEでは、社会・顧客・社員が魅力的に感じる会社を「ワクワクする会社」と呼んでいます。「魅力ある会社」「ワクワクする会社」とはどのような会社なのでしょうか。今日のテーマは、「皆が働きたい会社の姿」のイメージの共有化です。

(コンサル)
皆さんは、社会・顧客・社員が魅力的に感じる会社で働きたいと思いませんか(一同うなずく)。それでは、「社会・顧客・社員が魅力的に感じる会社」とはどのような会社なのでしょうか(一同困った顔)。EMEでは、社会・顧客・社員が魅力的に感じる会社を「ワクワクする会社」と呼んでいます。もう少し、具体的な言葉でいうと「皆が働きたい会社の姿」です(同様に困った顔)。しかし、イメージのつかないものを創ろうというのは、芸術家だってできません。そこで、これから皆さんに、ビデオを見て頂きます。廃業寸前から復活した、レジャー施設のビデオです。
そこで、ビデオを見て、考えて頂きたいことがあります。「考えてみよう」のテーマは、(1)ビデオを見て、どのように感じたか、(2)ビデオの企業が復活した要因をどのようなにとらえましたか です。
ビデオを見ながら、二つのテーマについて、自分で感じたこと、考えたことをポストイットに、どんどん記述してください。
では、ビデオを見ましょう。

‐ 中略 ‐

(コンサル)
前回と同じように2つのチームに分かれて、「かんがえてみよう」のテーマの(1)番と(2)番について、話し合ってみてください。やり方は、前回と同様です。自分の意見を模造紙に貼り付けていきましょう。

‐ 中略 ‐

(コンサル)
では、(1)番の「ビデオを見て、どのように感じたか」について、発表してください。今度は、Bチームからお願いします。
(Bチーム)
「従業員さん・アルバイトの方の笑顔が素敵だった」という答えが、全員からでてきた答えです(コンサル注:答えという表現はやめませんか。答えというと、すぐに正しい、正しくないという議論に陥りそうですから。「答え」ではなく「意見」としましょう)。次に、「掃除が行き届いていて、ゴミ一つ落ちていない」という意見も全員の意見です。あと、「お客さんも、皆楽しそうな顔をしている」
「自分も行ってみたい」「地域と密着している、地域を大切にしている」「手作りの案内板とかがとてもカワイイ」等の意見がでました。
(コンサル)
従業員さんやアルバイトの方が、楽しんで案内板等を作っていましたね。では、Aチームの発表をお願いします。
(Aチーム)
Aチームも、Bチームと同じような意見がたくさんありました。全員が一致した意見では「従業員さん・アルバイトさんが楽しそうに仕事をしている」「皆が手作りしているところがすごい」という意見でした。あと、多かった意見では、「清掃が行き届いている」という意見だけでなく「掃除については、自発的に皆が行っている」、また、案内板だけではなく「イベントも地域の人と一緒になって手作りで創っている」だから「従業員さんだけでなく、お客さんも、地域の人も自分たちのレジャー施設という認識を持っている」という意見がありました。AチームもBチームと同じように「自分も行ってみたい」という意見がたくさんありました。
(コンサル)
まさに、ここまで手作りでやるか・・・、という感じでしたね。でも、この施設もビデオで見て頂いたとおり、廃業寸前に追い込まれたのです。では、(2)番の「なぜ、復活したのでしょうか、復活した要因について」話し合ったことを発表してください。では、Aチームからお願いします。
(Aチーム)
やっぱり、施設長の「O氏の存在」が大きかった。O氏が情熱を失わなかったからだと思います。それと、O氏を取り巻く「従業員の方のなんとか存続させたい」という想いが、手作りのアイデアに結びついたのではないか。また、「地域の人の協力」に結びついたと思います。さらに、「皆の意見や夢」を絵にした、P氏の存在もユニークだった。今までは、設備の修理もすべて業者任せ立ったけれども、自分たちが修理すれば、まだまだ使えることが分かってきた。これらの情熱がお客さんに伝わるのだろうね。M温泉でも、まだまだやることが一杯あるように感じてきました。
(コンサル)
最後に、模範解答のような意見がでましたが、私は何も誘導していませんよ(笑い)。キーワードとしては、「リーダーのO氏」「情熱」「O氏を助ける仲間」「地域の人たち」「絵に描いた夢の存在」「自発的な手作り・修理」でしょうか。Bチームはいかがでしょうか。
(Bチーム)
最後の美味しい意見をAチームに取られてしまいました(笑い)。Bチームでは、「夢の存在」が大きかったように思います。皆がまとまったのは、「夢」を絵にしてからではないでしょうか。そして、Aチームからも意見がありましたが、施設再建の問題を仲間に投げかけ、仲間のアイデアを積極的に取り入れた「O氏の存在」でしょう。そして、自分たちから楽しもうと、「アイデアコンテストを取り入れた」こともメンバーのモチベーションを高めることに繋がったと思います。それと、「参加型」というコンセプトも良かったと思います。従業員も参加型、地域も参加型、お客さんも参加型、全員参加型のレジャー施設になったのではないでしょうか。
(コンサル)
Bチームも最後は、(美味しいところを取られたといっていましたが)Aチームと同じ意見ですか(笑)。Bチームのキーワードとしては、「絵に描いた夢の存在」「参加型のコンセプト」「O氏の存在」「部下の意見を取り入れる」「(自分たちから楽しもう)アイデアコンテスト」でしょうか。
 流石ですね、大事なキーワードが抽出されてきましたね。特に、絵に描いた「夢」というのが、大切ですね。夢というのはイメージですから、五感に訴えることが大事です。さらに、皆さんの発表から「リーダーの存在・情熱」「参加型というコンセプト」「自発的な仲間の存在」「モチベーションをたかめるアイデアの採用・アイデアコンテストのようなイベント」「地域社会のような協力者」がキーワードとしてでてきました。
(コンサル)
次回は、これらのキーワードをM温泉に落とし込むと、どのようなことが考えられるのか、いよいよ我社の魅力創りの検討をしていきましょう。Aチーム、Bチームのみなさんの期待は、次回に爆発させましょう。

プロジェクトのメンバーは、「我が社の魅力を創るために、何が大切なのか」をイメージしてきたようです。次回からの展開をお楽しみに

その3

~ とってもエコなんです ~

プロジェクトメンバーは、組織が変革するためには、組織を一つにまとめる絵や旗印が必要だと認識したようです。そこで、コンサルタントは、M温泉のスローガン(コーポレート・スローガン)創りを提案したのです。すると、とってもステキなスローガンができあがったのです。

(コンサル)
前回の研修では、組織が変革するためには、組織を一つにまとめる絵や旗印が必要だという気付きがありました。そこで、我々「M温泉」でも、錦の御旗「スローガン」を作りましょう。会社のコーポレート・スローガンとは、「我々が、お客様のために、どのような会社になりたいのか」を一言で表したものです。代表的な、コーポレート・スローガンとしては、アサヒビールの「すべてはお客様の うまい のために」があります。アサヒビールは、お客様から うまい の声を聞くために、商品開発-生産-配送-営業-情報システム 等々が、一丸となって組織変革に取り組んでいるのです。その他の会社の事例では
サントリー:生活文化企業⇒水とともに生きる
TOYOTA:Drive Your Dreams. 人、社会、地球の新しい未来へ。
NTT西日本:“光”。ひろがる。ひびきあう
SHARP:目のつけどころが、シャープでしょ。
花王:清潔で 美しく すこやかな毎日をめざして
このような、コーポレート・スローガンを、よく耳にしませんか。
(コンサル)
コーポレート・スローガンを創るために、まず、一人一人が、お客様に伝えたい「M温泉の魅力」や「M温泉のこだわり」を付箋に列挙しましょう。その上で、グループに分かれて、コーポレート・スローガンを絞り込んでいきましょう。

‐ 中略 ‐

(コンサル)
では、いつものように、AチームとBチームに分かれて、コーポレート・スローガンを絞り込んでいきましょう。各チーム3つ程度に絞り込んでください。絞り込む時に、いよいよ意思決定カードの出番です。(1)納得 (2)75%納得 (3)50%納得 (4)25%納得 (5)納得できない (6)わからない の6つのカードを使って、意思表示をしてください。納得度が低い場合、どこに納得できないのか、引っかかっているのか、不安があるのか、さらに、議論を深めていきます。

‐ 中略 ‐

(コンサル)
では、Aチームから、選んだスローガンと選んだ理由を発表してください。
(Aチーム)
スローガンの発表の前に、選んだ理由を発表させてください。先日、講習会に参加したとき、銭湯がとってもエコなんだ、と教えてもらいました。一つ一つの家庭が、自宅でお風呂を沸かさずに、銭湯に行くと、年間○○のエネルギーの節約になるのです。講習会まで知らなかったのですが、私達は、とても環境に優しい仕事をしているのです。そこで、エコを強調して、「M温泉で地球の笑顔」「銭湯でエコ生活」「・・・」を選びました。
(Bチーム)
銭湯に行くことがエコにつながることは、言われて、以前何かで読んだことを思い出しました。私個人的には、Aチームのスローガンに乗りたい気持ちです(笑)。気を取り直して、Bチームの発表を行います。Bチームでは、我々の強みを表現しようということになり「ワクワク(沸く沸く)M温泉」「あなたの笑顔が見たい」「・・・」というスローガンを選びました。
(コンサル)
今、6つのスローガンの案が出ましたが、ここからは、自由に意見を発表して、決めていきましょう。6つの言葉に制約される必要はありません。組み合わせて、新しいスローガンを作り出してもOKです。
(メンバーh)
私は、Bチームですが、Aチームの発表を聞くと、Aチームのエコという視点が、斬新で良いと思う。
(メンバーi)
地球温暖化が叫ばれている中、環境にやさしいというのは、とても伝えやすい、わたしは「M温泉で地球の笑顔」が良いと思う。
(メンバーa)
Aチームでは、身近なエコ生活を訴えたい、という意見がありました。
(メンバーb)
私が「M温泉で地球の笑顔」を出したのですが、“笑顔”でお客様の顔も浮かぶと思うのです。わたしは、「M温泉で地球の笑顔」に[納得]です。

(多くのメンバーが、[納得]のカードをあげる)

(メンバーj)
私は、どうしても[25%納得]しか、あげられません。bさんが言うように、“笑顔”でお客様の笑顔を表していると思うのですが、お客様は、「地球の笑顔」という言葉をみて、自分たちの笑顔を想像するでしょうか。わたしは、地域に愛されるM温泉でありたいので、やっぱり「お客様の笑顔」という言葉を入れたいのです。
(メンバーc)
たしかに、「地球の笑顔」では、地球だけが強調されている気がする。

(jさんの発言で、メンバーは、より深く考えるようになったようです。その後、いくつか地域密着の言葉をいれたスローガンの案が出されました。)

(メンバーa)
やはり、一人一人のお客様に笑顔になってほしいから、「あなたの笑顔」という言葉をいれては如何ですか。 「M温泉であなたと地球の笑顔」というのはいかがですか
(メンバーj)
M温泉は分かっているのだから、M温泉をはずして、「あなたと地球の笑顔」がすっきりしませんか。
(メンバーb)
それがいい。わたしは[納得]です。

(メンバーa、b、c、d・・・ 全員が、[納得]のカードをあげる)

(コンサル)
「あなたと地球の笑顔」。すばらしいコーポレート・スローガンができましたね。この「あなたと地球の笑顔」は、皆さんの宝物になるでしょう。次回からは、このプロジェクトの名称も「我が社の魅力創りプロジェクト」から、「あなたと地球の笑顔プロジェクト」に名称変更しましょう。

このようにして、M温泉では、プロジェクトメンバーの合意により、コーポレート・スローガン「あなたと地球の笑顔」が決まりました。次回は、「あなたと地球の笑顔」から、どのような魅力創りがスタートしたのか、についてご報告いたします。

皆さんはお気づきになったでしょうか。「M温泉で地球の笑顔」に決まりかけていたコーポレート・スローガンを、全員が合意できるコーポレート・スローガン「あなたと地球の笑顔」に導くキッカケをつくったのは、jさんの意見でした。プロジェクトのあと、jさんに発言の想いを聞くと「当初のコーポレート・スローガンも、とっても良いと思っていました。でも、なんか納得がいかなかった、地域やお客様一人一人から離れている、そんな不安感があったのです。だから、賛成や反対ではなく、なんか足りない、そのことを言いたかったのです。」という答えが返ってきました。人の意見は、賛成や反対だけではない、人の意見から、納得の度合いを理解することが大切なのです。意思決定カードとjさんの発言から、あらためて、合意のプロセスの重要性に気付かされました。

その4

~ 我が社の魅力を創ろう ~

今回も、2チームに分かれて、個人個人のアイデアを披露していきましょう。対話を通じて、各チーム5つ程度のアイデアに集約していきましょう。アイデアを集約するときには、意思決定カードを活用してください。使い方は、前回の通りです。

【Aチームの対話】

(メンバーa)
私は、「エコ新聞」を創ったら良いと思う。お風呂がエコだってこと、ほとんどの人が知らない。だから、M温泉から、エコの情報を流せば良いと思う。
(メンバーd)
“エコ”の話題だけだと、ちょっと堅苦しくない?もっと、お客様参加型の新聞にしたらどうだろうか。
(メンバーa)
例えば、お客様が心がけている“エコ”を投書してもらってもいいかも。
(メンバーc)
最初から、“エコ”を投書はきついよ。最初は、M温泉の気持ちよさについて、お客様の何気ない一言を載せたほうが、親しみやすくて、良いと思う
(メンバーb)
“エコ”だけではなく、健康もキーワードにいれても良いんじゃない。お年寄りの関心事は、やっぱり健康だよ
(メンバーa)
エコと健康が一緒になったら、焦点がボケないかしら。
(メンバーb)
最初から、難しく考える必要は、ないんじゃない。温泉は、湯煙でボーとしているんだから(笑)
(コンサル)
メチャ、面白いですね。bさんに座布団1枚!! 「エコ新聞」だけで、時間が終わってしまいそうだから、そろそろ、他の方のアイデアも議論してくださいね。
(メンバーb)
私は、お年寄りが使ってもらえる「健康マップ」もしくは「お散歩マップ」を創りたい。

【Bチームの対話】

(メンバーg)
私は、お風呂のマナーを詩にして、数え歌を創るアイデアを持ってきました。1番から10番まで、曲をつけて子どもでも歌えるようにして、マナーを自然に身につけてもらいたい。例えば、湯船に入る前には、かけ湯をしてもらわないといけないから、こんな詩を創ってみました・・・・
(メンバーh)
すごい。詩まで創ってきている。他にも、創ったの?
(メンバーg)
いえ、いまは、これだけです。
(メンバーh)
それやったら、社員から公募したらよいと思う。川柳みたいに字数をきめておいて、創ってもらったら面白そう。
(メンバーi)
それは、グッドアイデア。それで、曲はどうする?
(メンバーj)
お客さんにバンドやっている人がいるで、その人に頼んでみたらどうだろうか。
(メンバーi)
レコーディングするのか。
(メンバーh)
そんなこと、すぐできる訳ないでしょ。
(コンサル)
そうですか、お客さんに作曲してもらえそうな方がいるのですか。皆で話し合うと、いろいろなアイデアが広がりますね。また、M温泉として、ものすごい財産を持っているのですね。お客さんの力を借りる、私も、大きな気づきを頂きました。そろそろ、次の方のアイデアについても対話してあげてください。
(メンバーh)
私の友人にお地蔵さんを研究している人がいるのです。その人の話では、この地区には、多くのお地蔵さんがあるらしいのです。地域にそのようなお地蔵さんがあるのであれば、「お地蔵さんマップ」を創ったら良いと思う。

(中略)

大変な盛り上がりです。時間がいくらあっても足りない雰囲気です。コンサルタントは、「もう一度、全員で議論するから」と言いながら、アイデアの整理の後押しをしていきました。

(コンサル)
それでは、Aチーム・Bチーム、それぞれ整理したアイデアと、選んだ理由を説明してください。

Aチーム・Bチームの発表後、自由な対話に入りました。

(メンバーi)
「エコ新聞」は、M温泉とお客さんをつなぐ、ふれあい新聞になったら良いですね。
(メンバーb)
数え歌も良いよ。歌で躾ができれば、最高だね。社員から、歌詞を公募して、入選者には、金一封。ダメですか??
(メンバーc)
「健康マップ」と「お地蔵さんマップ」は一緒にできないか。お地蔵さんを探索すると健康になれる・・・
(メンバーj)
お地蔵さんの近くのお店を紹介すると、もっと地域と連携できる!!

(中略)

(コンサル)
またまた、話がつきませんね。そろそろ、5つ程度にテーマを絞りましょう。意思決定カードを忘れないように・・・

(中略)

(コンサル)
では、「エコ新聞」「数え歌」「お地蔵さんマップ(健康マップ)・・・の5つに決まりました。では、この5つのテーマについて、1テーマ5人程度の分科会を創りましょう。まず、この5つのテーマのリーダーから決めましょう。

このようにして、「あなたと地球の笑顔」を実現する、5つのテーマが決まり、テーマ毎に分科会ができました。

次回までに、テーマ毎に分科会で、内容を具体化することにしました。どのような内容が議論されてきたのか、次回ご報告します。

その5

~ メンバーも変化にびっくり ~

(メンバーg)
いやぁ、びっくりしました。社員さんに数え歌を募集したところ、(数十枚のカードを見せて)こんなに応募してくれました。 みんなの協力に感謝です。
(コンサル)
gさんは、「数え歌」分科会のリーダーでしたね。社員の皆さんに、どのようなアピールをされたのですか。
(メンバーg)
私のサンプルを入れた、「数え歌大募集」のチラシを作って、社員一人ひとりに渡しました。M温泉は、二ヶ所に温泉施設がありますし、ほぼ24時間稼動していますので、私一人で全員に配るのは無理ですから、プロジェクトのメンバーにも手伝ってもらいました。
(コンサル)
すばらしい取り組みですね。チラシを渡したときの社員さんの反応はいかがでしたか。
(メンバーb)
私も「数え歌」のメンバーですが、曲をつけて歌にする、というとみんな乗ってきましたね。「“作詞”に俺の名前が載るのか・・・」なんてね
(メンバーg)
でも、この先、どのようにまとめたら良いのか、行き詰っています。
(コンサル)
早速の行き詰まりですね(笑)。皆さんの意見で、「数え歌」分科会の価値を高めましょう。
(メンバーa)
まず、子供が読んでわかるレベルで創らないといけないと思います。
(メンバーc)
数え歌となる場面を想像してみては、どうだろうか。たとえば、「脱衣をして」、「かけ湯をして」・・・、「服を脱いで、お風呂に入って、服を着る」までの順番と数え歌の順番が一致していることが大事だと思う。
(メンバーi)
子供たちに対して、「風呂場で走らないように」も入れるべきではないですか。

(中略)

(メンバーg)
なるほど、なんとなく先が見えてきたような気がする。
(コンサル)
では、「数え歌」分科会の皆さんが、今後の展開をイメージしやすいように、お風呂の場面を設定しましょう。みんなで、付箋に「お風呂の場」を書き出してください。そして、その付箋をみんなで並べ替えて、整理していきましょう。
(メンバーb)
標準的な「お風呂の入り方」ができそうです。

(中略)

(メンバーa)
私たちの「エコ新聞」チームは、M温泉に対するお客様の声を集めてみました。その中で、自分の健康に関すること、 M温泉の従業員に関すること、コミュニケーションに関すること などの切り口で分類してみました。この切り口を発行する新聞毎のテーマにしたらどうか、たとえば、今月は健康特集など と考えています。
(メンバーj)
一度、A4で作ってみました。まだまだ、たたき台なので、みんなの意見を聴いて、修正したいと思います
(コンサル)
先にテーマがあって、お客様の声を集めるのではなく、集まった声から分類して、テーマを考えるという意見ですね。とてもお客様視点からのアイデアで、本当にワクワクしますね。では、創られた「エコ新聞」をたたき台として、意見交換しましょう。
(メンバーi)
「エコ新聞」にエコと名前をつけているので、地球が笑顔になれるようなエココーナーがあっても良いと思う。
(メンバーg)
お客様の声を新聞に載せるわけですから、事前にお客様から了解を得ておく必要があると思う。
(メンバーj)
地域の情報も載せたいですね。たとえば、地域のイベント情報など、あるいは「◎◎さんにお孫さんができた・・・」といったお客様の情報などを載せてみたい。

(中略)

(コンサル)
なかなか議論が尽きませんね。ぜひ、今まで出てきた要望をどのようにして「エコ新聞」に載せるか、分科会のメンバーで、さらに議論を深めてください。続いて、「お地蔵さんマップ」分科会はいかがでしょうか
(メンバーh)
前回の議論のあと、社長から聞いた話ですが、社長はこのエリアの「お地蔵さんを存続させる会」の幹事をやっているということなのです。私が「お地蔵さん」のアイデアを出した瞬間、社長はびっくりされたようですが、正直、私もびっくりしました。何か大きなご縁を感じます。
(メンバーc)
我々が足で調べた情報と社長の情報から、お地蔵さんのあるところはわかったのですが、お地蔵さんのいわれ(歴史)については、時間が掛かりそうです。しかし、時間の掛かるものは、かかるものとして順番に充実させれば良いと思いました。
(メンバーh)
まずは、マップ創りを優先したいと思います。
(コンサル)
まずは、できるところから手がけて、さらに充実させていく という考え方ですね。現場からの発想で、すばらしいですね。では、「お地蔵さんマップ」について、みんなで“価値足し”をしていきましょう(メンバーとの意見交換を通じて、新たな価値を付加していく考え方を“価値足し”と呼んでいます)

(中略)

(コンサル)
たたき台としての企画案が、意見交換を通じて、どんどん、新しい企画に変化してきましたね。この変化が価値を足していった成果なのです。次回は、アイデアを実現するために、具体的な活動や行動を明確にしていきましょう

今までの皆さんの意見を聴いていると、新しいアイデアの実行まで、あと一歩のところにいるようです。
プロジェクトのメンバー、特に、分科会のメンバーは、指摘された意見や質問を振り返りながら、テーマの実行に向けて、新たな価値作りに取り組んでいきました。その結果、さらに、楽しいアイデアが生まれてきたのです。

いよいよ、次回が最終回。M温泉では、どのような形でアイデアが具現化されていったのでしょうか。

その6

~ 瓦せんべいを作る ~

(メンバーg)
やっと、数え歌の歌詞ができました。ちょっと、聞いていただけます?
♪ひとつとせ~、人と人とのふれあいに・・・♪ 
♪ふたつとせ~、服を脱げばみな同じ・・・♪
(メンバーb)
gさん、ちゃんと歌になっているではないですか。 作曲もされたんですか?
(メンバーg)
いや~、プロジェクトのみんなで歌詞を考えていたら、自然と♪節♪がついてきたのです。
(メンバーh)
いよ! gさん天才!! (笑)
(メンバーg)
持ち上げたら、天まで昇りますよ(笑)。でも、やっぱり、ちゃんと作曲してほしい。どうしたら良いだろう。
(メンバーj)
前にもいったけど、良くお風呂に入りにくる学生が、ギター&マンドリンのクラブにはいっているって。その人に頼んでみたらどうだろうか。
(メンバーg)
jさん、その人を教えてくれますか。自分で頼んでみる。
(メンバーa)
gさん、頼もしいねぇ。 (笑)
(メンバーg)
ここまできたら、最後までやりたいではないですか。
(コンサル)
すばらしいチームワークですねぇ。エコ新聞もお地蔵さんマップも、ここまでくれば、あと一息でしょう(注:エコ新聞もお地蔵さんマップも他のプロジェクトも紹介できないぐらいに具体化されています)。もう一点、私のわがままを言って良いですか。M温泉の魅力を歌で伝える、これは聴覚です。そして、歌詞で伝える、これは視覚です。エコ新聞やお地蔵さんマップも視覚で伝えるステキな道具です。さらに、天然温泉の香り、これは嗅覚でしょう。もうひとつ、大切なことは、M温泉での肌と肌のふれあい、これは触覚です。M温泉の魅力を五感に訴えるためには、もう一つ足りません。何だと思いますか
(メンバー)
・・・。
(コンサル)
それは、味覚です。「あなたと地球の笑顔のために」を味覚で表現するアイデアはありませんか。
(メンバーh)
温泉といえば、風呂上りのビールかなぁ。
(コンサル)
風呂上りのビールでは、ちょっと弱いですね。木材を販売している企業では、30周年記念に、バームクーヘンを配りました。バームクーヘンは、ご存知の通り、年輪をかたどった焼き菓子です。木材を販売しているので、木材に関連する焼き菓子、それだけではなく、社員・お客様・仕入先あるいは金融機関の輪があって、ここまで成長することができたという感謝、さらに、今後とも、社員・お客様・仕入先・金融機関とともに成長していきたいという願いを、バームクーヘンという味覚に託したのです。ものすごい、反響でした。経営者の意図を、バームクーヘンが代弁してくれたのです。M温泉にも、M温泉を思い出させるような味覚はありませんか。
(メンバーa)
温泉卵では、特徴がないですね。温泉饅頭もいまいち。
(コンサル)
温泉ではなく、M温泉、特に、「あなたと地球の笑顔のために」をイメージできることが大切です。
(N社長)
そろそろ、私にも出番をください。みんなが楽しそうにやっているから、邪魔をしてはいけないと思う反面、自分の出番がないというのは寂しいものです。でも、やっと出番が回ってきました。
(メンバーi)
社長、つまらない提案だったら、却下ですよ。(笑)
(N社長)
プレッシャーを与えてくれるなぁ(笑)。まずは、聴いてくれるか。gさんの数え歌を「瓦せんべい」に焼印して売ったらどうか。商店街に「瓦せんべい」を製造販売している店があるだろう。あの店は、オリジナルな図柄を焼印して、PBせんべいを作ってくれる。十番まである数え歌を焼印して、十種類の瓦せんべいを作って売ろうではないか。
(メンバーa)
それは、面白いですね。数え歌を見て、聴いて、食べて、完璧です。
(メンバーb)
お土産で買っていくかもしれない。
(メンバーg)
私は、マナーの良い子に、景品としてあげたい。
(メンバーc)
それは良い、M温泉として、「良い子を育てる」地域への貢献もできる。地域が笑顔になるともっと良い。
(N社長)
私が、どのぐらいのロットで、どのぐらいの価格なのか、一度調べてみよう。
(メンバーa)
お地蔵さんマップのスタンプラリーの景品にしても良いよね。
(メンバーj)
スタンプラリーといっても、お年よりは分からないので、「お散歩道、完歩記念」にしたほうが良いんじゃない (笑)
(メンバーa)
エコ新聞を発行して、「あなたと地球の笑顔のために」をPRする立場から、景品や記念品として、活用できる場面を考えて見ましょう。

(以下略)

私も、自分のアイデアが、「瓦せんべい」になるとは思いませんでした(私がビックリ)。M温泉では、このあとも、具体的な活動に取り組んでいます。 M温泉に限らず、ワクワク会議の4つの約束、(1)相手の意見を批判したり、否定したりしない (2)できるだけ多くの意見や質問をする(意見や質問の質よりも量を重んじる) (3)評論家的な意見は言わない(自分の意見・質問を言う) (4)会議で決めるときは、必ず自分の意思表示をする(合意に参画する)、が浸透したとき、さらに、意思決定カードが定着したとき(最後は、意思決定カードを使う必要がなくなるぐらい、プロジェクトチームが意思決定をしていきます)、プロジェクトチームが主体的に動き出し、高い付加価値を創造するようになります。
皆さんも、ワクワク会議に挑戦しませんか

次回からは、「ワクワクする経営理念を実践する ~EMEの受講者満足への取り組み~」をご報告します